【グレン】
「久しいな、ユイ。
お前とこうして顔を合わせるのは、四年ぶりか」
【唯】
「……グレン……!」
【グレン】
「──強き意思の光を宿した、その眸。
真っ直ぐな心根は昔と変わりないようだな、ユイ」
【グレン】
「そう、俺が組織を去ったあの日から、
お前の姿は、少しも変わりなく幼いままだ……」
【グレン】
「どうした、ユイ? そのざまは──」
【唯】
「……っ……!」
【唯】
「よくも……!!
ぬけぬけと、お前がそんな言葉を……!」
【唯】
「この身体、こんな風に変えた元凶は、
他ならぬお前だろうが──グレン・ザイツェフ!」
【唯】
「エルネイの無上の信頼を裏切り、仲間を裏切り、
この身を変えたお前の罪、
オレは決して忘れたりしない……!」
【唯】
「禁域を犯し、貴重な遺物を強奪して逃げた罪と共に、
今宵こそすべてをお前に償わせる……!」
【グレン】
「面白い。やれるものなら、やってみるがいい」
【グレン】
「だが、俺を捕らえるのは、容易くないぞ?」
【グレン】
「四年程度の修行では、弟子に師を越えることは、
まだまだ難しいと思うが──な」
【朱里】
「《祭司長》の親しき 輩 (ともがら)であり、
唯の魔術の師範を務めた男……」
【朱里】
「お前か、グレン・ザイツェフ。
組織の封印庫を破って逃亡を図った、堕ちた魔術士」
【朱里】
「四年前、封印庫から 聖遺物(アーティファクト)を奪った罪で、
直ちに国際手配を受けるも、
いまだ捕捉に至らぬ、 組織 (オグドアス)の上級魔術犯罪者──」
【朱里】
「これまで動きを見せず沈黙を守り続けたお前が、
事件から四年が過ぎた今頃、
突然現れて活動を開始した理由は、何だ?」
【グレン】
「……時が到った、ということだ」
【グレン】
「伏して待つばかりの沈黙の季節は過ぎ、
俺が動くべき時が来た、というだけのこと──」
【グレン】
「長らく時をかけて豊穣の季節を待った若穂は実り、
収穫の時がついに訪れた」
【グレン】
「さあ、ユイ──お前と俺の誇りと信念を懸けた、
真なる戦いの始まりだ」
【グレン】
「地上に生きとし生けるもの、すべてを巻き込んだ、
大いなる祭りの儀式の、これが始まりの 瞬間 (とき)」
【グレン】
「この祭儀の 趨勢(すうせい)を決めるのは、
すべての事象の鍵を握る、お前だ──ユイ」
【唯】
「グレン……!」
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