朱里に口づけられている事実に気づいたのは、
触れた箇所からあふれ、体内に流れ込んだ鮮烈な力に、
しばらく頭を真っ白に灼かれた後のことだ。

口づけ――それも、互いの舌を絡ませ合うような、
濃厚でより深い接触を介して、
魔力の枯渇しかけた相手に力を送り込む、緊急措置。

それを自分がほどこされている事実を、
理性では必要と理解したが、
感情面ではどうしても受け入れられない。

無理に入り込み、強引に絡まされた舌が、
こちらの反応を探るようにゆっくりうごめくたび、
唯はたまらずひくんと身を震わせる。

深く触れ合ったところから身体の芯に、
まるで熾火をともすように強く深く魔力を送り込まれて、
強引に満たされゆく快感に震えが止まらない。

身体中をめぐる魔力が、《種子》の中に流れ込むたび、
埋め込まれた下腹が脈打つように熱くなる。

【唯】
「ん、んう……!」


逃げられないよう壁に押しつけられ、
恐いほどの強さで朱里に囚われた手首と肩の、
しびれるような、熱さと痛み――

唇を割って入り込み、強引に絡まされた舌の、
熱く濡れそぼつ、感触――

触れ合ったところから次々流れ込む魔力の奔流に、
くだけてしまいそうなほど、震える脚――

それらすべての感覚が、
鋭敏な唯の身体が許容できる範囲を遙かに超えて、
いちどきにどっと押し寄せる。

異性と触れ合った経験もないのに、
同性、しかも長い間わだかまりを覚えた相手と、
これほど濃厚な行為を交わさなければならないことが、
唯にはひどく耐え難い。

【唯】
「ん……っ、う……ぁ、は……」


混乱する心をどうしたらいいか分からなくて、
たまらず、すがるように朱里の腕をつかんだ指先に、
ぎゅっと唯は力を込める。




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