鋼鉄のような指に手首を取られ、
抵抗を考える間もない速さで引き寄せられた唯は、
そのままたくましい腕の中に倒れ込む。

そして、顎にかかった指に強引に上を向かされ、
大きくあお向く姿勢を強いられた挙げ句、
気づいた時には、噛みつく強さで唇をふさがれていた。

【唯】
「……!?」


電撃的に自由を奪われ、強引に呼吸をふさがれても、
いったい自分が何をされているのか、
初めのうち、唯は状況をはっきりと理解できなかった。

だが、抱き込まれて唇を奪われ、
望まない口づけをグレンに強いられている認識が、
少しずつ染み込んで唯の脳に届く。

【唯】
(オレ、は……グレンに、口づけを……!?)


グレンにされている行為をはっきりと自覚した瞬間、
唯は息苦しさと羞恥に激しく身もだえ、
持てる力を尽くして男の腕から逃れようと暴れ始める。

しかし、万力のごとく肌に食い込む、
鋼の強さを備えた指が手首をきつく捕らえて離さず、
唯は拘束を振りほどくことができない。

【唯】
「んっ……う、う……っ!」


熱く濡れた舌の感触が、まるで形を確かめるように、
ゆっくりと唇をなぞってゆく動きに、
望まぬ交わりを強いられる事実を強く意識させられる。

せめて、最後の一線だけは略奪者に許すまいとして、
グレンの侵入を拒んで唇を固く結び、
舌先によるなまめいた行為を、唯は懸命に耐え忍ぶ。

けれど、唯のささやかな抵抗をものとせず、
グレンは強情に結ばれた唇にじっくりと舌をはわせて、
ぬるい感触に震える過敏な反応を愉しんでいる。

【唯】
「ん……は、あ……!」


やがて、息苦しさに負けてあえいだ瞬間、
その隙を待ち構えたように舌先が奥にすべり込んで、
あっけなく口腔への侵入を果たされてしまう。

【唯】
「ん、うっ……!? んん、ん……っ!」


強引な侵入者の存在におののき、
たまらず口内を逃げ惑う小さな舌先を、
グレンの巧みな舌が絡め取る。

【唯】
「んう、うっ……ん、ん……っ!」




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