![]() ![]() 初めに目に入ったのは、 闇の中で銀色に光るふたつの光彩。 次に目を引いたのは、月光のように白くけぶる、銀の髪。 そこに立っているのは、 銀色の目、銀の髪であるという点を除けば、外見上は 暁人と変わらぬただの少年のように見えた。 感情の読めない硝子のようなまなざしと、人形のように白く 凍りついた容貌は、冴え冴えとした月を思わせる。 その陶器のような顔に映る、非人間的なまでの 感情のとぼしさが、彼をまるで人外の生き物に思わせた。 意志や欲望といった感情をともなわない、 不思議に透明で純粋な殺意を、少年から感じる。 少年は手にした剣を何の気構えも見せず、 暁人に向けた。 蒼刃の硬く鋭い輝きがひらめき、暁人の喉元に 突きつけられる。 【暁人】 「……!!」 あとわずか数ミリ動かすだけで、たやすく暁人の命を奪える 凶刃の存在に、身じろぐことさえ出来ない。 ――なのに、どうしてか恐怖を感じない。 少年の持つ、野生の獣が発するような、自然で純粋な 殺意のせいかも知れない。 狙い定めた獲物の力を計るように暁人を見る、 少年のまなざし。 生きるため、ためらいも感傷もなく、 命を奪うことの出来る生き物の目だ。 ただ暁人だけを視界に入れた瞳の中に、初めて感情の うつろいらしきものが見えた。 【謎の少年】 「……おまえは誰だ」 少年の場違いなまでに静かな声が投げた問いに、 暁人は思わず目をみはった。 【謎の少年】 「おまえ、《彼ら》の一人か」 【謎の少年〕】 「――匂いがする」 【謎の少年】 「しかし、これは……」 【謎の少年】 「…………」 【謎の少年】 「おまえ、何者だ」 少年の詰問の意味が理解できず、 暁人はその問いかけに答えることが出来なかった。 >>BACK TO MENU |
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