【暁人】
「……!?」

自分が置かれた状況をとっさに理解することが出来ず、
混乱した視線をさまよわせる。

辺りに人の気配はなく、この場にいるのは暁人ひとり。

動こうとして、自分が囚われの身となっていることに、
初めて気がついた。

暁人の手首は高く掲げられた状態で、黒い石柱に、
固く紐で縛りつけられている。

暁人の自由になるのは視線くらいなものだったが、
それも縛された腕が邪魔をして動かせる範囲は限られていた。

紐を解こうと身をよじったが、
かえってきつく締まるばかりで解くことが出来ない。

手首を紐が擦る動きに痛みを感じて、暁人はしばし、
息を詰める。

――あつい。

……それから、息苦しい。

夢の中で感じた熱は、目覚めた今も退くことなく
暁人のうちに留まっている。

熱さは一向に引く気配がなく、それどころか時が経つにつれ、
ますます強くなっているように思える。

病で体温が上がって高熱に浮かされるのとは、質の違う熱さ。

かすかな身体のうずきと喉の渇きを覚えて、
暁人は熱をはらんだ吐息をつく。


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